自律神経

自律神経の乱れが原因?自律神経失調症の原因と対処法

あなたは自律神経失調症と診断されて悩んでいるのではないでしょうか? もしくは、自律神経失調症の治療をしているにも関わらず、一向に体調が良くなっていないのではないでしょうか?
自律神経失調症とは、自律神経の乱れによって自律神経に関連した不調が出現している状態です。めまいやふらつき、頭痛といった自律神経に関連した症状があるにも関わらず、血液検査やレントゲンなどで異常が認められない場合、自律神経失調症と診断されます。
自律神経失調症に対しては、薬物療法が実施されるケースが多いです。
ただ、自律神経失調症の原因のほとんどは生活習慣にあります。そのため、生活習慣を見直すことが自律神経失調症を解消するためには必須です。
そこで今回は、「自律神経失調症の原因と対処法」について解説します。

自律神経とは

自律神経とは、食べ物の消化・吸収や呼吸、発汗などを無意識下でコントロールする神経です。
例えば、運動して体温が高くなると、自然と汗が出てきます。これは、体温が上がり過ぎないように自律神経が働いたために起こる現象です。他にも、緊張したときにドキドキしたり、呼吸が早くなったりする現象にも自律神経が影響しています。
そして自律神経は、体を興奮させる「交感神経」と、逆にリラックスさせる「副交感神経」の2つから作られています。
通常、交感神経と副交感神経は以下のようにバランスが保たれています。

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イメージとしては、微妙に揺らぎながらも均衡を取っている状態です。
ただ、常に交感神経と副交感神経の均衡が取れているわけではありません。状況に応じて、交感神経と副交感神経の優劣が変化することで、外部の環境に適応しているのです。
例えば、人前に出て発表するときに緊張すると、以下のように交感神経が強く働きます。

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交感神経には心拍数や呼吸数を多くする働きがあるため、緊張するとドキドキしたり、呼吸が早くなったりするのです。
その一方で、お風呂に入ったり、横になったりすると、以下のように副交感神経が強く働きます。

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副交感神経には、心拍数や呼吸数を少なくする働きがあるため、お風呂に入ったり横になったりすると、心拍数や呼吸が落ち着くのです。
このように自律神経とは、無意識下で体のさまざまな機能を調整している神経になります。
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自律神経失調症とは

自律神経の乱れは、さまざまな病気を引き起こす原因になります。自律神経の乱れが原因と認識されている代表的な病気に「自律神経失調症」が挙げられます。
自律神経失調症とは、その名の通り「自律神経のつりあいが悪くなっている(失調している)」状態です。簡単に言うと、「自律神経に関連した不調が現れているけれども、血液検査やレントゲンなどで原因がはっきりしない」場合に、自律神経失調症と診断されます。

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自律神経に関連した症状とは、めまいや吐き気、動悸、冷や汗などを指します。
他にも、耳鳴りや頭痛、微熱、過呼吸、倦怠感、不眠、生理不順、味覚障害といった身体症状、人間不信や情緒不安定、不安感、イライラ、被害妄想、うつ状態など精神的な症状も、自律神経に関連した症状となります。
いってしまえば、「検査で異常が見つからない、よくわからない不調」は自律神経失調症と診断されかねないのです。

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このように自律神経失調症とは、非常にいい加減な病名だということを知っておいてください。

自律神経失調症の3つのタイプ

一言で自律神経失調症といっても、自律神経の均衡が崩れる原因は人それぞれ異なります。一般的には、自律神経失調症のタイプは「精神的ストレスタイプ」「肉体的ストレスタイプ」「混合タイプ」3つに分類されます。


精神的ストレスタイプ 精神的ストレスが原因で自律神経の均衡が崩れやすいタイプ
肉体的ストレスタイプ 過労などの身体的なストレスが原因で自律神経の均衡が崩れやすいタイプ
混合タイプ 精神的ストレス、身体的ストレスの両方が原因で自律神経の均衡が崩れやすいタイプ


例えば、職場のストレスが積み重なって不調が出現しているのであれば、精神的ストレスタイプだといえます。それに対して、働きすぎが原因で体調を崩しているのであれば肉体的ストレスタイプの可能性が高いです。
「精神的ストレスも肉体的ストレスも考えられる」という人は、混合タイプになります。
自律神経失調症について理解するためには、まずはあなた自身のタイプを把握することが大切です。

自律神経失調症の症状

自律神経失調症の症状は人それぞれ異なります。自律神経が全身のあらゆる器官をコントロールしているため、自律神経の均衡が崩れると、さまざまな不調が出現するのです。
例えば、自律神経失調症によって心臓を支配している神経にトラブルが生じると、動悸が起こる可能性があります。また、発汗を調整している汗腺に異常が生じれば、汗をかきすぎたり、逆に汗が出なくなったりといった発汗トラブルにつながります。
その他にも、人間不信や情緒不安定、不安感などの精神的な症状が出るケースも多いです。
以下に自律神経失調症で起こりやすい症状についてまとめます。


身体的症状 精神的症状
・めまい
・吐き気
・動悸
・冷や汗
・耳鳴り
・頭痛
・微熱
・過呼吸
・倦怠感
・不眠
・生理不順
・味覚障害
・人間不信
・情緒不安定
・不安感
・イライラ
・被害妄想
・うつ状態


このように一言で自律神経失調症といっても、現れる症状は多岐にわたるのです。

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自律神経失調症の原因

自律神経失調症と診断された場合、「原因不明と判断された」と考えて間違いありません。自律神経失調症の原因は、簡単に言うと「自律神経のバランスが崩れている」となります。ただ、病院を受診しても「なぜ自律神経のバランスが崩れているのか?」を明確に教えてもらえないのが現状です。
確かに、自律神経失調症と診断される人の症状は複雑で多岐にわたるため、原因を特定するのは難しいです。
しかし、自律神経のバランスが崩れるのには原因があります。自律神経失調症のタイプ別の部分でも述べましたが、基本的に自律神経のバランスを乱すのは「精神的ストレス」「肉体的ストレス」のどちらかです。
 ・精神的ストレス
精神的ストレスは、イメージがしやすいのではないでしょうか?
例えば、精神的ストレスとしては、職場における上司からのプレッシャーや家庭における夫婦間のストレス、育児ストレスなどが挙げられます。心理的に大きな負担がかかると、ストレスの量に応じて自律神経にも負担がかかるためバランスが崩れてしまうのです。
上司からプレッシャーを受けているのであれば、上司が近くにいるだけで心臓がドキドキしたりするのではないでしょうか? また、育児ストレスを感じている人は、子供の泣き声を聞くだけでイライラするのではないでしょうか?
こうしたストレスも一時的なものであれば、すぐにバランスを取り戻すため問題ありません。ただ、長期的になってストレスが積み重なると、自律神経のバランスが戻らなくなってしまうのです
その結果として、自律神経失調症の状態になってしまいます。
 ・肉体的ストレス
ストレスというと、精神的ストレスが頭に浮かぶのではないでしょうか? しかし実際には、精神的なストレスだけでなく、肉体的なストレスも体にとっては同じように負担となり自律神経を崩す原因となります。
例えば、睡眠不足は身体へ強いストレスとなります。通常、体は一定時間眠って脳を休めなければいけません。
睡眠不足の翌日にイライラしやすくなるのを、経験したことがあるのではないでしょうか? これは、睡眠不足によって脳が十分に休まっていない(脳へのストレスが強くなった)ために、自律神経のバランスが崩れてしまって起こる現象です。
他にも、働きすぎや運動のし過ぎなども自律神経を乱す原因となります。

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このような肉体的なストレスが原因でも、自律神経失調症になる可能性があるのです。

自律神経失調症の治療法

病院で自律神経失調症と診断されると、当然ですが何かしらの治療が行われることになります。
例えば、自律神経を落ち着かせる薬(自律神経失調製剤)や不安を和らげる薬(抗不安薬)、神経を落ち着かせる漢方などの薬物療法があります。一般的な病院であれば、薬物療法が第一選択となるでしょう。
その他にも、病院によっては以下のような治療法が提案される場合もあります。
・カウンセリングなどの心理療法
・指圧やマッサージ、整体、鍼灸、ストレッチ、
・音楽療法やアロマテラピー
・自律訓練法
・自己管理によるライフスタイルの見直し
このように自律神経失調症に対しては、さまざまな治療法があるということを知っておいてください。

自律神経失調症の解消法

先に述べたように、自律神経失調症に対しては薬物療法などが実施されるケースがほとんどです。ただ、自律神経のバランスが崩れる原因のほとんどは、あなた自身の生活習慣にあります。そのため、自律神経失調症を根本的に改善するためには、生活習慣を見直すことが必須です。
特に、「ストレス」「睡眠」「食事」「運動」の4つを意識すれば、自律神経のバランスを整えることができます。

ストレスを解消する

精神的なストレスは、自律神経の乱れを招く大きな原因です。そのため、生活を見直してみてストレスに心当たりがある場合には、ストレスを解消する方法を考えるようにしましょう。ただ、ストレスを解消する方法はアクティブなものを選ぶようにしてください。
例えば、あなたは「テレビや映画鑑賞がストレス解消になる」と考えているかもしれません。しかし実際には、そうした受身的なストレス解消法は効果的ではないのです。
そうではなく、ストレッチやヨガ、ピラティス、ウォーキングなど、体を動かすストレス解消法がおススメです。こうした運動は、運動自体にストレスを緩和する効果が期待できます。さらに、運動して体力がつくとストレスを受けにくくなるのです。
このように、ストレスが原因で自律神経失調症になっているのであれば、運動によってストレスを解消するようにしましょう。
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睡眠時間を確保する

ストレスと同じくらい自律神経に影響を与えるのが睡眠になります。睡眠不足だとイライラしたり、体が硬い感じがしたりするのは、睡眠不足によって自律神経のバランスが崩れたことが原因で起こる現象です。
具体的には、少なくとも7時間以上は睡眠時間を確保するようにしましょう
必要な睡眠時間は人によって異なります。ただ、7時間以上は寝た方が体の負担は大きく減ります。もちろん、十分な時間眠っても睡眠の質が低いと自律神経のバランスは崩れます。
例えば、8時間寝ていても「朝起きるのが辛い」「午前中や夕方に眠気が生じる」といった場合、睡眠の質が悪い可能性が高いです。そうした場合には、睡眠時間を確保することと合わせて、睡眠の質を高める工夫が必要です。
そうはいっても、とにかく睡眠時間が6時間未満の人は7時間以上寝れるように努力しましょう。
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食事を改善する

食事も自律神経を乱す大きな要因になります。特に、炭水化物(糖質)がたくさん含まれた食べ物を頻繁に食べていると、自律神経が乱れやすくなるのです。
炭水化物を摂取すると、血糖値(血液中の糖分量)が一気に高くなります。以下の図のようなイメージです。
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ただ、それほど多くの糖質を取らなければ、2~3時間後には図に記すように空腹時の値に戻ります。こうした高くなった血糖値を元に戻すときに自律神経に負担がかかります。つまり、血糖値の変動が大きくなるほど、自律神経のバランスが崩れやすくなるのです。
そのため、糖質を摂り過ぎて血糖値が高くなるほど、自律神経が乱れやすくなります。

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また、糖質を摂り過ぎて血糖値が上がり過ぎると「グルコーススパイク」と呼ばれる現象が起こります。グルコーススパイクとは、血糖値が急上昇して急下向する現象です。
そうなると、以下の図に記すように、急下向した勢いで低血糖状態となってしまう可能性があります。

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こうして、糖質の過剰摂取によるグルコーススパイクが原因で起こる低血糖は「機能性低血糖」といいます。当然、血糖値が高くなったときと同じように、血糖値が下がりすぎたときにも自律神経に負担がかかります。
つまり、こうした「グルコーススパイク → 機能性低血糖」となると、山と谷の分だけ自律神経が乱れやすくなるのです。
自律神経失調症を解消するためには、食事による血糖変動にも注意しなければいけません。
グルコーススパイクが起こる糖質の摂取量は人によって異なります。ただ、おおよそ1食での糖質量を40gに抑えた上で、間食をしないようにすれば血糖値は安定しやすくなります。ポイントは、「糖質を摂り過ぎないこと」「ダラダラ食べをしないこと」の2点です。
特に、食後数時間以内に強い眠気が生じる人は、食事によって大きく血糖値が変動している可能性が高いため注意してください

運動する

運動には、自律神経を整える効果が期待できます。
例えば、ウォーキングなどの軽い運動には、それ自体にリラックス効果があります。そのため、ストレスや睡眠不足が原因で交感神経が優位になっている人は、運動によって自律神経のバランスが整いやすくなります。
また、運動不足で副交感神経が弱い人は、運動によって適度に交感神経が刺激されて自律神経のバランスが整いやすくなるのです。
このように運動には、交感神経と副交感神経のどちらが優位である人にも、自律神経のバランスを良くする効果が期待できます
ただ、運動するときのポイントは「筋トレなどのハードな運動ではなく、ウォーキングやジョギングなどの軽い運動を実施する」ということです。息切れしたり、筋肉痛が残ったりするほどの運動は、逆に自律神経のバランスを崩すことにつながるため避けるようにしてください。
自律神経失調症と診断されて運動ができるような状態であれば、積極的に運動するようにしましょう。
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今回述べたように、自律神経失調症とは、自律神経のバランスが崩れた状態をいいます。そして、自律神経が乱れる原因のほとんどは生活習慣にあるため、自律神経失調症を解消するためには生活習慣を見直して改善することが大切です。
自律神経失調症で悩まされているのであれば、病院で実施される薬物療法と合わせて生活習慣を見直すようにしてください。