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セロトニンと自律神経の関係性:セロトニン神経の活性化法

ストレスとは、何かしらの刺激に対する体の反応のことを指します。一般的には、「体に対する何かしらの刺激」のことをストレスと言いますが、これは正確には「ストレッサー」と呼ばれるものです。
そして、ストレッサーに対するストレス(反応)は、人それぞれ異なります。
例えば、10のストレッサーに対して、2のストレス(反応)を起こす人もいれば、同じ10のストレッサーに対して10の反応を示す人もいます。
こうしたストレス(反応)の違いには、脳の中にある神経の働きが関係しています。
脳内のストレスコントロールに関係する神経として、「セロトニン神経」というものあります。人の体では、セロトニン神経が正常に働くことで、ストレッサーに対して適切なストレス(反応)が起こります。
そのため、日々のストレッサーに強くなり病気を予防するためには、セロトニン神経の正常な働きが欠かないといえます。
そこで今回は、「セロトニン神経の活性法」について解説します。

脳の分類

人が活動するためには、脳の活動が欠かせません。例えば、物を触る動作1つにしても、「触る」という行為は脳の指令によって行われますし、「触った」という感覚は脳で感じます。
このように、運動にも感覚にも関係する脳ですが、役割によって大きく4つの部位に分けることができます。
それは、生きていくために必要な「脳幹(のうかん)」と、食欲や生存などの生存に欠かせない「視床下部(ししょうかぶ)」、感情を作る「大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)」、言語や運動などの高度な役割を担う「大脳皮質」の4つです。
人間は、他の動物と違い、言語を使い、計画的あるいは社会的なルールに従って行動することができます。これは、人間が他の動物と比較して大脳皮質が発達しているためです。
そして、大脳皮質の中でも「前頭前野」と呼ばれる場所が、人間らしさを作り出す部位になります。
前頭前野は、脳の前方部分に位置しており、感情を形成する大脳辺縁系の働きをコントロールする役割を持っています。大脳辺縁系を調整することで、感情だけで行動することを抑え、人間社会での生活を可能にしています。
それに対して動物は、前頭前野が発達していないため、大脳辺縁系の活動が優位になり、本能のまま感情に従って行動します。
例えば、人であれば、ちょっとした嫌なことがあっても、相手のことを考えたりその場の雰囲気を考慮したりして、すぐに怒ったり嫌な顔をしたりしません。その一方で動物は、すぐに感情を表し、吠えたり噛みついたりします。
もし仮に、人間がこのように感情に基づいた行動ばかりしていると、人間社会は成り立たなくなってしまいます。
そして、ストレスコントロールにもこうした前頭前野の働きは関係しています。ストレス(ストレッサー)が問題となるのは、ある刺激に対して、体のストレス(反応)が過剰に起こるときです。
このようなストレッサーに対するストレス(反応)をコントロールしているのが、前頭前野になります。
そのため、ストレスコントロールを実践する上で、前頭前野の働きや「前頭前野がその他の部位を調整している仕組み」を知っていることは大切だといえます。

前頭前野と他の場所をつなぐ神経

脳内の情報は、神経を介して他の場所に伝わります。前頭前野による感情の調整も神経によって行われています。
そして、そのような脳内の情報伝達を行う神経は、主に3つあります。それは、危機的な刺激に関連する「ノルアドレナリン神経」と、快刺激や報酬などに反応する「ドーパミン神経」、そしてこの2つを調整する「セロトニン神経」の3つです。

ノルアドレナリン神経

ノルアドレナリン神経は、脳幹に存在しています。そこで、生命を危機に陥れるような刺激に対して反応し、脳内のさまざまな部位に情報を伝達します。そして、血圧を上げるなど、体を興奮させるような反応を引き起こすことで、そのような危険な刺激に対応します。
例えば、夜寝ているときに、耳元で叫んだり、いきなり頭を叩いたりすると、ノルアドレナリン神経が活発に働くことで体は覚醒します。
こうした反応は、体にとって必要不可欠なものですが、ノルアドレナリン神経の働きが過剰になり過ぎると問題です。もし体が興奮し続けてしまうと、ノルアドレナリン神経が持続的に活動するようになり、結果的に血圧や血糖値が高くなるといった状態になります
逆にノルアドレナリン神経が適切に働かないと、体を奮起させるべきときに、体の興奮反応が起こりません。
例えば、寝ている時に、火事などの危機的な状況になったとします。このときに、もしノルアドレナリン神経が興奮しなければ、血圧や心拍数が高まらないため、急いで逃げることができません。
このように、ノルアドレナリン神経は、適度にバランス良く活動することが大切になります。

ドーパミン神経

ドーパミン神経も、脳幹に存在しまています。ドーパミン神経は、何かしらの行動によって期待される「快」や「報酬」と、実際に得られた「快刺激」や「報酬刺激」の差が大きくなると興奮します。
例えば、テストで80点を目指して勉強した人が、実際のテストで90点を取ると、期待と現実に差が生じて、ドーパミン神経が活動します。
そしてドーパミン神経は、期待と実際の差が大きければ大きいほど活発に働きます。また、ドーパミン神経も、ノルアドレナリン神経と同じように、脳の他の場所に情報を伝達することで体を興奮させます。
ただ、ドーパミン神経による興奮はノルアドレナリン神経によって引き起こされた反応とは異なり、喜びや気持ち良さといった感情を引き起こします。
こうしたことから、ドーパミン神経は意欲に関係します。
人間は、何かの報酬を期待して、働いたり勉強したりしています。そして、報酬を目指して努力した結果、実際に報酬が得られると、さらに意欲が高まり行動します。これは、ドーパミン神経の働きによるものです。
しかし、努力が必ず報酬につながるわけではありません。そのため、ある行動を行っても報酬が得られなくなると、それはストレスとなってしまいます。
そしてそうした状況になると、人間は一度得た快をもう一度得ようとして、同じ行動を繰り返すことになります。つまり、依存的になります。これが、パチンコなどのギャンブルなどにハマる原因です。
そのため、ドーパミン神経に依存した生活には限界があるということです
そこで、既に述べたノルアドレナリン神経とドーパミン神経を調整し、適度な体の緊張を保っているのが「セロトニン神経」になります。

セロトニン神経

セロトニン神経も、ノルアドレナリン神経やドーパミン神経と同じように、脳幹に位置しています。また、セロトニン神経が存在する場所の周りには、呼吸や咀嚼など、生きるために欠かせない運動を司る役割を持つ部位があり、セロトニン神経と相互に関係しています。
そして、セロトニン神経は脳全体の幅広い領域に影響を与えます。実際に、セロトニン神経は、大脳皮質をはじめ、大脳辺縁系や視床下部、脳幹など、あらゆる部位に働きかけます。
そのため、セロトニン神経は、運動や感覚、高度な思考から感情、運動など、脳の活動によって作り出される多くのことに影響を及ぼしていると言えます。こうして、セロトニン神経がオーケストラの指揮者のように、脳全体を調整してバランスをとっているのです。
同じように、ノルアドレナリン神経やドーパミン神経の活動を調整しているのも、セロトニン神経になります。
そして、セロトニン神経による行動のコントロールは、ノルアドレナリンやドーパミンによるものと違い、体にとって害となることがありません
セロトニン神経には、ノルアドレナリン神経と同じように体を興奮させるような働きがあります。ただ、セロトニン神経による興奮は、車でいうアイドリング状態のようなものです。つまり、「適度に覚醒しており、いつでも活動できる」という状況を作ります。
例えば、眠たいときに無理やり運動して体を興奮させるのは、ノルアドレナリン神経の働きによるものです。
ただ、こうした急な運動では、眠気を覚ますことはできますが、活動する準備ができていない心臓や筋肉に対して過剰な負荷がかかることになります。そのため、体にとっては大きな負担となります。
また、眠たいときには、太陽の光を浴びることでも意識を覚醒することができます。これは、セロトニン神経の働きによるものです。
こうしたセロトニン神経を活性化させるような日光浴などによる覚醒は、ノルアドレナリン神経を活発にする運動などによる興奮と違い、体に対して過剰な負担がかかりません。
このように、セロトニン神経が活発に活動することで、ノルアドレナリン神経やドーパミン神経とは違い、過剰なストレス反応を起こすことなく、覚醒状態を保つことができるということです。
このことから、ストレスコントロールには、セロトニン神経の働きが欠かせないと言えます。

セロトニン神経を活性化させるポイント

セロトニン神経を活性化するポイントとして「リズム運動」「太陽の光」「アミノ酸」の3つが挙げられます。この3つのポイントを意識して生活することで、セロトニン神経によるストレスコントロールがより効果的に行われるようになります。

リズム運動

「咀嚼」や「呼吸」「ウォーキング」などの繰り返し行うリズム運動を行うことで、セロトニン神経の活動は高まることが明らかになっています。これは、リズムがあるものであれば何でも良いです。
例えば、ガムを噛むといった行為や、エアロバイクなどでもセロトニン神経の活動は促されます。他にも、太鼓を叩く、念仏を唱える、フラダンスを踊るなど、繰り返しリズムを刻むような運動であれば何でも問題ありません。
その際の注意点は、無理なく、継続してできるものを行うことです。
セロトニン神経は、運動を開始してから5分程度で活動し始め、20~30分でピークになります。このような理由から、リズム運動は15分以上行うことが大切です。また、あまりに長く行って疲労感が出てしまうと、セロトニン神経の働きは弱まります。
そのため、リズム運動は15分~30分の時間を目安に行うようにしましょう
さらに、セロトニン神経の働きを活性化させるためには、継続が大切です。セロトニン神経の活動が高まった効果を実感できるようになるまでは、約100日必要です。つまり、リズム運動は3ヵ月間は続けることが大切になります。

太陽の光

セロトニン神経は、太陽の光で活性化されるという性質があります。そのため、朝日を浴びながらウォーキングや呼吸などのリズム運動を行うことは、2重の意味でセロトニン神経の活動を促します。
しかし、太陽の光も浴び過ぎには気をつけてください。1~2時間以上、太陽の光に当たり続けると、セロトニン神経の活動が弱まることが明らかになっています。このような理由から、朝日を受けながらの運動は1時間程度にするようにしておくことが大切です。

アミノ酸

アミノ酸とは、タンパク質を構成する要素です。口から食べたタンパク質は、唾液や胃液によって消化され、アミノ酸まで分解されうことで腸から吸収できるようになります。
そして、セロトニンはアミノ酸の中でも「必須アミノ酸」と呼ばれる栄養素が原料になります。必須アミノ酸は、体内で合成することができないものであるため、食事から必ず摂る必要があるアミノ酸です。
セロトニンは必須アミノ酸の中でも「トリプトファン」という物質を基に作られます。そして、トリプトファンは、バナナや大豆製品、乳製品といったものに多く含まれています。
そのため、朝食や昼食などで、必須アミノ酸を豊富に含む食品をしっかり摂取するように心がけることで、セロトニンの合成を促すことができます。
今回述べたように、脳は、刺激に対する情報を共有することで覚醒を保ちます。そのような情報伝達は、ノルアドレナリン神経とドーパミン神経、セロトニン神経の3つで行われます。
そして、体の健康を維持するためには、これら3つの神経がバランス良く活動することが大切になります。
ノルアドレナリン神経とドーパミン神経の活動をコントロールするのは、セロトニン神経です。そのため、セロトニン神経の活動を活性化させるような生活を意識することが、健康のためには欠かせないといえます。