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体質と病気の関係:東洋医学における体質別の特徴と対処法

体質という言葉は、健康業界や整体業界などでよく使われます。ただ、体質の明確な定義はなく、ほとんどの場合が曖昧な意味で使っていることが実状です。
こうした体質について知るためには、東洋医学を学ぶことが有効です。東洋医学では、具体的に「陽性体質」や「陰性体質」など、体質を分類しています。そして、それぞれの特徴や体質に応じた食事法などが提唱されています。
そのため、東洋医学の体質を学ぶことで、自分自身の体質を理解することができます。また、体質に合わせた対処法を実践すれば、体質改善を図ることも可能です。
そこで今回は、「体質と病気の関係:東洋医学における体質別の特徴と対処法」について解説します。

陰陽論とは

陰陽論とは、宇宙の全てが「陽」と「陰」のバランスで成り立っているという考え方です。例えば、太陽や昼、上、南などは「陽」、月や夜、下、北などは「陰」の性質を持つとされます。陰陽論では、これらが相互に関係し、バランスをとって、宇宙での事象が起こっていると考えます。
陽は、乾燥や温かい、明るい、収縮などの性質を持ちます。一方、陰には、湿潤や冷え、暗い、拡張などの特徴があります。
このような、陰陽は、食べ物や体質にも応用されています。そして、東洋医学では、このような陰陽の性質を用いて、病気の治療を行います。マッサージや鍼、食事指導、漢方など、東洋医学の治療は、全て陰陽論が基礎となって行われます。

陽性体質と陰性体質

東洋医学では、陰陽論を体質に当てはめて、治療に応用します。病気になった場合、西洋医学では病気の症状を抑え込むような処置を行います。一方、東洋医学は、その人の体質を見極め、体質を改善することで、結果的に病気を治癒させます
体質は、簡単に言うと、暑がりの「陽性体質」と、寒がりの「陰性体質」に分けられます。どちらの体質かによって、かかりやすい病気が異なります。
通常、男性は「陽」、女性は「陰」が強い傾向にあります。男性は暑がる一方、女性は寒がる傾向にあるのは、このためです。しかし、男性でも、色白で長身、白髪になりやすい人は、「陰性」、女性でも、元気で声が大きく、活動的な人は「陽性」のことが多いです。
他にも、以下のような特徴があります。

陽性体質 陰性体質
・色が黒い、暑がり、髪が少ない
・声が大きくて楽天的
・せかせかと忙しく動き回る
・あから顔でずんぐりムックリ
・血の気が多く体温が高い人
・色が白い、寒がり、白髪が多い
・繊細で神経質
・ナイーブで周りの目を気にしがち
・体温が低く、顔が青白い
・冷え性で筋肉が少ない

体質によってかかりやすい病気

陽性体質か陰性体質かによって、かかりやすい病気は全く異なります。これは、西洋医学の概念でも説明できます。陽性体質は、「交感神経」と言って体を興奮させる神経が優位な人です。一方、陰性体質は、体をリラックスさせる「副交感神経」の働きが高い人に多いです。
病気の多くは、交感神経と副交感神経で構成される自律神経のバランスが崩れることによって起こります。これは、陰と陽のバランスが崩れることと同じと考えて良いです。
そのため、交感神経と副交感神経の特徴を知っておくと、体質によってかかりやすい病気が理解できます。

交感神経系 副交感神経系
瞳孔散瞳
涙腺分泌抑制
唾液分泌抑制
心拍数亢進
胃腸運動抑制
四肢の血管収縮
立毛筋収縮
汗腺分泌亢進
瞳孔縮瞳
涙腺分泌亢進
唾液分泌亢進
心拍数抑制
胃腸運動亢進
四肢の血管拡張
立毛筋弛緩
汗腺分泌抑制

このような特徴は、先ほど述べたように、ほぼ、陽性体質と陰性体質を作り出すような体の反応です。
交感神経優位な陽性体質は、食べ過ぎや栄養過剰によるメタボリックシンドロームになりやすいです。そのため、陽性体質の人の場合、それに関連した病気にかかりやすいと言えます。
逆に、副交感神経優位である陰性体質は、体の水分量が多く、冷えています。そのため、陰性体質の人は低体温に関係したような疾病を患いやすいと言えます。
最後に、それぞれの体質でかかりやすい病気をまとめます。

陽性体質 陰性体質
高血圧
脳卒中
心筋梗塞
糖尿病
痛風
脂肪肝
便秘
がん(肺、大腸、膵臓、前立腺など)
低血圧、貧血
胃炎
むくみ
風邪
虫歯
肺炎
胃癌
潰瘍性大腸炎
アレルギー
リウマチ
関節痛
精神病
膠原病
白血病

体質を改善する食事法

東洋医学では、体質に合わせた食事をすることで、陰陽のバランスを整え、結果的に病気が治ると考えて食事指導を行います。体質に陰陽があるように、食べ物にも陰陽があります。
そのため、東洋医学では、冷え症などの陰性体質の人は、体を温める陽性食品を摂るのが良いと判断します。逆に、陽性体質の人は、体を冷やす陰性食品物を食べると良いと考えます
陽性食品と陰性食品は、陰陽の特徴をそのまま当てはめるとわかりやすいです。
色では、赤や黒、橙などの暖色系の食べ物は「陽性」です。一方、青や白、緑などの寒色系は「陰性」であることがほとんどです。
例えば、黒パンや黒砂糖、小麦、黒豆、紅茶などは、陽性食品です。寒色系食品では、牛乳、緑の野菜、白砂糖、白米、白パンなどが、陰性食品の例として挙げられます。
また、その食べ物が作られた場所によっても陰か陽に分けられます。
通常、自然の摂理に従って、熱い南方に住む人たちは、体を冷やす食べ物を好んで食べます。逆に、寒い北方の人は、体を温める食品をよく食べます。
そのため、北の寒い地域でとれる鮭や蕎麦などは、体を温める性質を持つ陽性食品とされます。一方、バナナやパイナップル、トマト、スイカ、キュウリ、コーヒーなどは、体を冷やす陰性食品です。日本は、四季があるので、夏にとれるものは陰性、冬にとれるものは陽性と覚えておいてください。
さらに、収穫物が太陽に近いところでとれるものは陰性、土中でとれるものは陽性です。
陰性食品は、自分自身が冷えているため、太陽に向かって伸びていきます。陽性食品は、逆に土の中に伸びていきます。根菜類やニンジン、レンコンなどはその典型例です。
他にも、食べ物の軟らかさや、含まれる栄養素などによっても陰性と陽性に分けられます。軟らかいものや、カリウムを多く含むものは陰性食品です。一方、硬いものやナトリウムの多いものは陽性食品になります。
以下に、陽性食品と陰性食品の例を挙げます。

陽性食品 陰性食品
・北方産のもの
 鮭、カニ、ホタテなど
・赤、黒、橙、黄色のもの
 赤身の肉や魚、黒パン、卵、海藻、黒豆、黒砂糖
・塩分が多いもの
 味噌、しょうゆ、佃煮
・水分が少なく、硬いもの
 チーズ、漬物、せんべい
・根菜類
 ごぼう、ニンジン、レンコン、山芋、ショウガ、ネギ
・アルコール
 日本酒、赤ワイン、焼酎のお湯割り
・南方産のもの
 バナナ、スイカ、パイナップル、レモン、マンゴ-、コーヒー
・青、白、緑色のもの
 牛乳、白砂糖、豆腐、緑茶、白パン、うどん、白米
・緑の葉野菜
 レタス、白菜
・酸っぱいもの
 鬆、ドレッシング、マヨネーズ
・水分が多く軟らかいもの
 パン、生クリーム、バター、ジュース
・アルコール
 ビール、焼酎、ウイスキー

今回述べたように、人には、それぞれ体質があります。そして、その体質に合った食事をすることで、体の健康を維持することができます。ただ単純に「体を温めるものは良くて、冷やす食べ物はダメ」と考えるのではなく、あなたの体質に合った食事を考えることが大切です。
まずは、あなた自身の体質を知り、どのような食材が適しているのかを把握しておくことが重要です。