体の機能

筋肉のエネルギー供給の仕組み:有酸素運動、無酸素運動

スポーツジムなどで、日常的運動をしている人は多いかと思います。運動を行う際、その方法や姿勢も重要ですが、より大切なのは「その後の筋肉のケアや栄養補給」です。
筋肉も一つ一つの細胞で構成されているので、エネルギーによって活動しています。
質の良い筋肉を育てるためには、疲れた筋肉に休息と栄養を与えてエネルギーを蓄えさせることが必要です。
ここでは筋肉のエネルギー供給の仕組みを見ていくことで、効率的なエネルギー補給のための原則が理解できるようになります。
 筋肉が収縮するためのエネルギー供給
筋肉が収縮するためには、エネルギーを発生させるための「ATP」の存在が必要不可欠です。ATPとはアデノシン三リン酸の略語であり、筋収縮のために必要なエネルギーを貯めておくタンクのような役割を担います。
筋肉のエネルギー供給システムの種類は、以下の2つの機構とそれぞれに2つの経路があります。
 ・無酸素系エネルギー供給機構(ATP-PCr系、解糖系)
筋肉が元々蓄えているATPと、クレアチンリン酸(PCr)を利用してエネルギーを作る仕組みです。ATP-PCr系は、瞬発的な運動によく利用されますが、ATPとPCrは無限にあるわけではないので、10秒ほどでこのシステムによるエネルギーの供給は底をつきます。例えば、100走などでこのエネルギー供給経路が使われています。
一方、解糖系では、まず筋肉中に蓄えられているグリコーゲンをグルコースに分解します。その後、グルコースを材料としててATPを生成するものです。このシステムはエネルギーの生成の過程で、疲労物質である「乳酸」が作られるため、過剰にたまると疲労感の原因になります。
ATP-PCrほどではありませんが、高い強度の運動に適しているのがこの供給経路です。短めの運動(1?3分)ではこの解糖系のエネルギーが利用されやすいです。
 ・有酸素系エネルギー供給機構(クエン酸回路系、電子伝達系)
クエン酸回路系こは、ATP-PCr系、解糖系よりも強度が低い運動時に働きます。 「有酸素運動で脂肪が燃焼する」と言われるのは、このクエン酸回路によるものです。
クエン酸回路では、疲労物質である乳酸を「ピルビン酸」に再変換して、エネルギー源として消費することができます。つまり、解糖系でつくられた疲労物質でもある乳酸を利用し、エネルギーを作ることができるということです。
激しい運動の後に、クールダウンとして軽いジョギングなどの運動を推奨されることがあります。これはクエン酸回路を働かせて乳酸を分解することで、身体に疲労物質がたまる前にすぐに消費するためです。
これは、運動後の疲労を緩和させる方法として活用することができます。
そして有酸素系エネルギー供給貴構には、もう一つ電子伝達系があります。解糖系やクエン酸回路でATPを生成するときに、同時に「NADH」や「FAD2」という物質が作られます。電子伝達系の経路は、これらの物質を利用してATPを得るものです。
このエネルギー反応には酸素を消費します。つまり、有酸素運動ではクエン酸回路と併用してATPを生産しているということです。エネルギーを生産するための代謝の最終到達点として、電子伝達系が利用されています
 エネルギー供給の流れ
運動時間が短く強度が高い場合は、ATP-PCr系によりエネルギーが作られます。運動が長くなるにつれて、徐々にその供給源が解糖系やクエン酸回路系、電子伝達系などの有酸素系の経路に変わっていきます。
一つの運動でも、沢山のエネルギー供給回路が組み合わされて働いています。
そのため、トレーニングを行うときは、自身の競技の強度や特性を考え、それぞれのエネルギー供給に合わせたメニューを考えることが大切です。