痛み・疼痛

関節痛と寒冷療法・アイシングと温熱療法・ホットパックの関係性

関節痛に対する処置の仕方として、冷やすことと温めることがあります。これは多くの人が悩む選択であり、専門家でも的確に選べる人は少ないです。
しかし、その選択には一定の基準があります。そのことを知っておくと、早期の疼痛軽減が図れ、その後の治りを早くします。また、受傷直後に適切な対応を行っておくことで、専門家としては、とても治療が進めやすくなります。
そこで今回は、関節痛に対する物理療法の選択について解説します。
 寒冷療法の目的
冷やすことの最大の目的は、疼痛を軽減させ、受傷後早期に運動を開始することにあります。受傷後すぐは症状が強く、関節を動かすことが難しい場合が多いです。
寒冷刺激には、神経の感覚を鈍くし、痛みを感じにくくするという作用があります。そのため、寒冷療法によって痛みが軽くなることで、関節運動をスムーズに行えるようになります。そして、関節を動かすことで、循環が良くなります。
疼痛は、損傷部位に炎症を引き起こす物質があることで生じます。痛みを軽減させるには、血液の流れを良くし、炎症性物質を除去する必要があります。そのため、受傷後早期に、関節運動を行うことは大切です。つまり、寒冷療法は、その後に行う関節の運動がセットになってはじめて効果が出るということです。
また、冷やすことには、もう一つの作用があります。それは、損傷部位周囲の細胞を冬眠させることです。
組織の損傷には、周囲にある血管が影響を受ける場合がほとんどです。つまり、障害された細胞の周りにある細胞への血流に問題が生じることが多いのです。そのため、血液供給がなくても、細胞が壊死しないように、冷やして細胞の活動を休息させることが重要になります。
壊死細胞が増えると、その細胞の影響で、腫れや痛みなどが増強されます。そのため、冷やして細胞の活動を下げることで、出来る限り壊死する細胞を減らします。
その結果、疼痛や腫脹などの炎症反応が速やかに改善されます。
 温熱療法の目的
温める刺激は、血流の流れを良くすることにつながります。そのため、先ほど述べたような、循環を促すことで症状を軽減させる効果があります。
また、組織は温められることで、柔軟性が高まるという性質があります。つまり、温熱刺激を加えた後に運動を行うと、通常より体が動かしやすいということです。その結果として、循環が良くなり、症状が軽減します。
さらに、温めることは、体をリラックスさせます。体に痛みがある人の多くは、心も体も興奮しています。これらの緊張は、痛みを増悪させます。そのため、ホットパックなどで体を温めることで、緊張が緩み、結果的に症状が軽減します。
 寒冷療法と温熱療法のどちらを選択するか
では、具体的に痛みがある際、どのように寒冷刺激と温熱刺激を使い分ければよいでしょうか。多くの人は、体を冷やすことが良くないと考え、疼痛がある部位を温めます。しかし、状況によっては、冷やすことが劇的な効果を生むこともあります。
例えば、受傷直後などで、その場所に炎症がある場合は、寒冷療法が有効です。このような状態は「炎症期」といい、約2週間続きます。
症状には、以下のようなものがあります。
・安静時の痛み
・夜間の痛み
・わずかな運動での痛み
・腫脹
・熱感
・発赤
・限局した強い痛み
以上のような症状が認められる場合は、寒冷療法が有効です。
逆に、温熱療法は、「慢性期」に効果的です。慢性期とは、通常の炎症期間が過ぎているにも関わらず、症状が続いている期間を言います。
症状には、以下のようなものがあります。
・鋭い痛みではなく、鈍い痛み
・運動で悪化しない痛み
・安静にしている方が、痛みが増す
・動き始めに痛い
このような症状が認められる場合は、温熱療法が効果的です。
今回述べたように、寒冷療法と温熱療法には、それぞれの特徴があります。そして、症状に応じて使い分けることが大切です。このことを知り、受傷後に適切な対処を行うことで、早期の疼痛改善につなげることができます。