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ダイエット中の生理前に起こる食欲への対処法:生理周期とダイエット

ダイエットをしている中で、生理前の食欲に悩まされた経験はないでしょうか?
ダイエットを指導している人の中には「生理周期に合わせて食事法や運動法を変える」という人が多く存在します。その理由は、生理周期によって食欲や代謝の状態が変化するためです。確かに、生理前はお腹が空きやすかったり、生理後は体重が減りやすかったりします。
そのため、こうした生理周期を考慮して食事や運動を調整することは大切であるように思えます。
しかし実際には、生理周期中に起こる食欲や代謝の変化は、体に必要であるために起こっている現象です。その生理的な現象に反した方法でダイエットをすることは、体への負担を大きくして最終的に体調不良を招く可能性が高いといえます。
ただ、生理前に食欲が強くなったときに「好きなものを好きなだけ食べて良いか?」というと、そうではありません。こうした場合には、生理前に食欲が増す原因を突き止めた上で、適切な対処を行うことが重要です。
そこで今回は、「ダイエット中の生理前に起こる食欲への対処法」について解説します。
*生理周期におけるホルモン変動がイメージできないのであれば、「生理周期のホルモンバランスについて図を使ってわかりやすく解説」に詳しく書いているので、参考にしてください。

ダイエット中の生理前に起こる食欲への対処法のまとめ

・生理周期中に起こる食欲の変化は自然な現象
・生理前に過剰に食欲が強まるのには原因がある
・生理周期中に起こる現象に反するようなダイエット方法は避けるべき
・基本的に生理周期はあまり考慮しなくて良い
・自律神経のバランスが整っているのであれば、食欲に従って栄養が高い食品を食べるべき
・生理前の過剰な食欲には原因がある
・生理前に過食傾向にある人は、原因を特定した上で栄養を補給すべき

ダイエット中には生理周期によって食事を変えるべきか?

ダイエットを指導している人の中には、生理後である「卵胞期」と生理前である「黄体期」に起こる体の反応に合わせて、食事を変える人がたくさんいます。
卵胞期には「エストロゲン」と呼ばれるホルモンが、黄体期には「プロゲステロン」というホルモンが作られます。そのホルモン変動に合わせて食事方法を変えるのです。
例えば、エストロゲンの作用によって脂肪が燃焼されやすい卵胞期に食事制限を頑張らせ、脂肪や水分を溜め込ませる作用があるプロゲステロンが分泌される黄体期には、無理に食事制限を実施しないように指導されます。
また、黄体期に脂肪や水分の吸収を抑える作用をもつ大豆を積極的に摂取するダイエット方法を指導している人もいます。
ただ、このような生理周期に合わせたダイエット方法は本当に必要なのでしょうか? 私は、生理周期によってダイエット方法を変える必要はないと考えています。それは、生理周期に起こる現象は、体が必要であるために起こっている反応だからです。
ここからは、生理周期とダイエットの関係性について解説します。
まずは以下の図に記す、生理周期におけるホルモンバランスの変動と、エストロゲン、プロゲステロンの働きを頭に入れておいてください。

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エストロゲンの働き プロゲステロンの働き
・乳管の発達、乳汁分泌の抑制
・子宮内膜の増殖、子宮筋や卵管の成長
・LDLコレステロール値の低下
・脂肪の分解を高める
・基礎体温の低下
・血液凝固の抑制
・骨量の維持
・皮脂の分泌抑制
・乳腺の発育や乳汁分泌抑制
・子宮内膜の脱落や子宮筋の収縮抑制
・子宮筋の毛細血管の発達促進
・排卵の抑制
・基礎体温の上昇

生理前である黄体期はお腹が空く

基本的に食欲は、ホルモンによってコントロールされています。生理周期中に起こる食欲の変化も、ホルモンが大きく影響しているのです。
黄体期には、プロゲステロンの影響によってお腹が空きやすくなります。プロゲステロンには血糖値を下げる作用があるため、食欲中枢を刺激して食欲を増進させるのです。
血糖は体のエネルギー源になります。そのため、血糖値が低くなると脳は「エネルギーが不足している」と判断して、エネルギー源を補給させるような指令を作ります。
こうしたメカニズムから、生理前には食欲が高まります。
「生理前は異常にお腹が空く」「生理前に甘いものが食べたくなる」といった人は多いですが、これらは黄体期に分泌されるプロゲステロンが作り出しているのです。

生理前である黄体期の食欲増進は正常

それでは、なぜ黄体期にはプロゲステロンが分泌されて食欲を増進させる必要があるのでしょうか。それは、黄体期が妊娠の準備をする期間であるためです。
妊娠は黄体期に精子と卵子が受精して、受精卵が子宮内膜に着床することで起こります。黄体期に分泌されるプロゲステロンは、「受精卵が子宮内膜に着床して成長するための体作りを促す作用」をもっているのです。
妊娠中は、胎児を成長させるために普段以上の栄養素が必要になることは想像できると思います。プロゲステロンには、そうした状態に備えて体に栄養を溜め込ませる作用があるのです。
具体的には、食欲の増進と脂肪分解の抑制によって、体に栄養と脂肪を溜め込ませます。いってしまえば、プロゲステロンが分泌されているときには痩せにくいのです。こうした食欲増進や脂肪分解の抑制といった反応は、女性が妊娠するために必要不可欠な反応だといえます。
つまり、黄体期に起こる食欲の増進は正常な反応なのです。
このことを考慮すると、豆乳などを使って黄体期に脂肪の蓄積を抑えるダイエット方法を実施するのは、良いダイエット方法だとはいえないと思います。
まずは「黄体期に起こる食欲増進は、妊娠する準備をするために生じる正常な反応である」ということを理解しておきましょう。

生理周期は自律神経が調整している

生理周期の特徴は主にエストロゲンとプロゲステロンによって作られます。そのため、ホルモンのバランスが整っていれば、基本的に生理周期は規則的に起こります
ただ、自律神経のバランスが崩れると、生理周期は乱れます。自律神経がホルモンのバランスを調整しているためです。
例えば、睡眠不足やストレスは自律神経のバランスを崩す大きな要因になります。睡眠不足や過度なストレスなど、不規則かつ乱れた生活習慣を送っていると生理周期が崩れやすくなるのは、一般的に知られているはずです。
これは、生活習慣によって自律神経が乱れた結果、エストロゲンとプロゲステロンのバランスが崩れてしまったために起こる現象だといえます。
このように、ホルモンの分泌は自律神経によってコントロールされているということを理解しておいてください。

プロゲステロンが生理前の食欲を強める

そして、自律神経はホルモンバランスに大きな影響を与えるため、自律神経のバランスが崩れていると、生理周期中の食欲も乱れてしまうのです。いってしまえば、自律神経の乱れは生理前の過食を引き起こします。
逆に自律神経が整っていれば、必要以上に食欲が増すことはないのです。
つまり、生理周期を気にせずにダイエットを実施するためには、自律神経のバランスが整っていることが前提だといえます。
プロゲステロンには食欲を増進させる作用があります。そのため、自律神経のバランスが崩れてプロゲステロンが過剰に分泌されてしまうと、当然ながら食欲は増します。

エストロゲンが生理前の食欲を強める

また、自律神経の崩れによって卵胞期にエストロゲンが過剰に分泌されていると、黄体期の空腹感が強くなります。エストロゲンには、「コルチゾール」というホルモンの分泌を促す働きがあるためです。
コルチゾールとは副腎で作られるホルモンであり、脳に働きかけて食欲を増進させる作用があります。
エストロゲンは、コルチゾールが分泌されやすい状態を作ります。そのため、自律神経影響によってエストロゲンが必要以上に作られていると、黄体期に遭遇するちょっとしたストレスでコルチゾールが過剰に作られて食欲が増進するのです。
例えば、精神的なストレスはもちろんのこと、睡眠不足やハードな運動なども、コルチゾールの分泌を促します。
つまり、自律神経の乱れによって卵胞期にエストロゲンが過剰に分泌されていると、ちょっとした生活習慣の崩れで大量にコルチゾールが分泌されて食欲が高まるのです。

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エストロゲンは以下の要因でも過剰に作られる可能性があります。
・肥満
・夜型の生活
・目の酷使
・ピルの服用
・肝機能の低下
・乳製品の過剰摂取
・大豆製品の過剰摂取
・環境ホルモン(ダイオキシンや殺虫剤など)
・過剰な飲酒
・食品添加物
実際には、プロゲステロンが優位になって食欲が過剰になることは少ないです。そのため、黄体期の強い食欲を防ぐためには、主にエストロゲンの分泌に影響する因子だけ注意していれば良いでしょう。
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生理前の食欲は我慢しなくていい

基本的に、自律神経のバランスが整っているときには、生理周期によって起こる食欲の変化に合わせて食べて問題ありません。その食欲は、妊娠の準備のために起こる反応であって、体が自然に発しているサインであるためです。
*自律神経が乱れているかを確認する方法は、「自宅で簡単!体脂肪率と椅子を使って痩せない原因を特定する方法」「生活習慣の問題でやせない人必見!自律神経トラブルの原因を特定する方法」を参考にしてください。
いってしまえば、黄体期に食欲が強まる人は、栄養不足やエネルギー不足の状態なのです。
そのため、生理前に起こる食欲を我慢してしまうと、栄養不足やエネルギー不足を悪化させることになります
また、もし黄体期に食欲に従って食べて体重が増えたとしても、ホルモンのバランスが整っていればすぐに体重は落ちます。黄体期から月経期を経て起こる卵胞期に、脂肪の燃焼が高まって、黄体期に蓄えた分の脂肪が減るためです。
生理周期に限らず、体重は日々1~2キロ変動しています。ただ、ホルモンと自律神経のバランスが大きく崩れない限りは、体重のわずかな変動はすぐに調整されます。
生理周期に伴う体重の変動も同様であり、黄体期の食欲増進によって増えた体重は、卵胞期に調整されます。そのため、過度に心配して卵胞期に食事制限や運動をする必要はありません。
こうしたことからも、黄体期に起こる食欲(体からのサイン)に逆らって我慢する必要はないのです。

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生理前の過剰な空腹は栄養不足が原因

そもそも、妊娠にするために必要な栄養が満たされていれば、黄体期であっても過剰な食欲が起こることはありません。黄体期に過度な食欲が生じるのは、栄養が不足しているサインの一つだと考えられます。
例えば、体脂肪率が20以下、もしくはBMI(Body mass index)が18を下回るなど、あまりに体脂肪率や体重が低すぎる人は、明らかに脂肪が不足している状態だといえます。
妊娠するためには、ある程度の脂肪が必要であるため、このような状態の人は生理前に食欲が強まる可能性が高いです。また脂肪だけでなく、妊娠にはタンパク質も欠かせません。
他にも、鉄や亜鉛、カルシウムといったミネラルやビタミンB群などのビタミンも、妊娠するためには必要不可欠な栄養素です。そのため、黄体期に過度な食欲が起こっており、血液検査でこれらの栄養不足を指摘された場合、栄養不足が原因で食欲が増している可能性が高いといえます

エネルギー不足も生理前の過剰な食欲を作る

前述したように、生理前に生じる食欲増進は、妊娠に必要な栄養素を十分に補給するために生じた反応です。また、身体の機能を上手く働かせるためには、エネルギー(カロリー)が必要になります。
ダイエット目的に糖質制限をしている人の中には、エネルギー不足が原因で生理前の食欲が強くなっている人もいます。生理中はエネルギー消費が高まるため、それを見越してエネルギーを補給しようとするのです。
この場合、エネルギー源を糖質に依存している人は、甘いものを過剰に欲するようになります
いくら普段は糖質制限をしていても、生理前に甘いものを食べたくなる人は、完全には糖質依存から脱していない可能性が高いです。
また、糖質に依存していなくても脂質の代謝が悪く、脂肪からエネルギーを上手く作り出せない人も、甘いものを欲する傾向にあります。
それに対して、脂肪が多く含まれている食品を欲して、実際に食べると食欲がおさまる人もいます。こうしたケースは、「脂質代謝には問題ないけれども、脂質の摂取量が足りていない」という可能性が高いです。
このように、黄体期に過度に食欲が強まる場合には、自律神経やホルモンバランスの乱れ、栄養不足、エネルギー不足などが隠れているということを理解しておきましょう。

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生理前である黄体期に注意すべきこと

黄体期は、妊娠に向けて体が栄養を溜め込みます。このときの食欲は自律神経によってコントロールされているため、自律神経のバランスが整っていれば、食欲に従って食べた方が良いです。食欲を我慢すると、栄養不足やエネルギー不足を助長してしまう可能性があるためです。
ただそうはいっても、黄体期で食欲が強いときに気をつけなければいけないこともあります。
そこで以下に、黄体期に注意すべきことについて記します。

生理前には極力糖質は避ける

黄体期に体が栄養を欲しているからといって、過剰な糖質を摂取するのは避けるべきです。糖質を摂り過ぎると、自律神経やホルモンのバランスを崩すことになります。
糖質の摂取は血糖値を上昇させます。血糖値が上がりすぎると、体は血糖値を下げるための反応を誘発します。このとき、自律神経とホルモンが過剰に働くことで血糖値が調整されるのです。
そのため、黄体期にお腹が空いたからといって糖質を摂り過ぎると、急激に血糖値が上昇して、その分だけ自律神経とホルモンに負担をかけることになるのです
当然ながら、自律神経とホルモンのバランスが崩れると、生理周期に悪影響を及ぼします。また、血糖値を下げるために作られる「インスリン」は、脂肪を蓄積させて必要以上に脂肪を身体に溜め込ませる作用をもっているのです。
つまり、黄体期の食欲に合わせて糖質を摂り過ぎると、生理不順と肥満を招く可能性が高いといえます。
こうした理由から、黄体期にお腹が空いたからといって糖質を摂り過ぎないように注意してください。

生理前には栄養をしっかり摂る

既に述べたように、黄体期に食欲が増したときには何かしらの栄養やエネルギーが不足している可能性が高いです。そして、痩せすぎていたり、食事量が少なすぎたりして体の脂肪やエネルギー源が不足している場合には、糖質ではなく脂質を摂取するようにしましょう。
脂質であれば、糖質のようにホルモンと自律神経のバランスを大きく崩したり、インスリンを過度に分泌させたりせずに、体が求めている栄養を補給できます。
例えば、脂肪分が多い肉や魚、卵などは黄体期に食べる食品としておススメです。また依存していないのであれば、バターや生クリーム、チーズなども良いでしょう(ただし、これらは食べ過ぎると、依存しやすいだけじゃなくインスリンの分泌を促すので注意が必要です)。
その他にも、タンパク質やミネラル、ビタミンが豊富な食品を摂るように意識してください。栄養不足によって過食が引き起こされている場合には、これらの栄養素が足りていない可能性が高いためです。
特に生理前の強い食欲には鉄不足が影響しているケースが多いです。
黄体期に過度な食欲が起こったときには、以下のことを意識するようにしましょう。
・お菓子や加工食品を避ける
・パンやご飯などの糖質を過度に摂取しない
・肉や魚、卵などの栄養が豊富な食品を食べる
・植物性食品よりも動物性食品を摂る
・必要であればサプリメントも考慮する
このように、栄養が豊富な食品を摂って栄養が満たされれば、黄体期の過食は自然と無くなるはずです。
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脂質が摂れない人は適度に糖質を摂る

何度も述べているように黄体期は、体が脂肪を蓄積しようとしている時期です。また、エネルギーの消費量も高くなっています。そのため、栄養不足やエネルギー不足で食欲が増している場合には、血糖値を変動させにくい脂質を摂取することが大切です。
ただいくら脂質を摂取しても、脂質が体内で上手く代謝できないと、摂り入れた脂肪がエネルギーに変わりません
そうなると、体が求めているエネルギー源を補給できていないことになります。
そのため、黄体期の過食があって脂質の代謝が悪い人は、適度に糖質を摂取することも大切です。血糖値を急激に上げない程度の糖質でエネルギーを補給すれば、エネルギー不足を防げます。
例えば、黄体期にどれだけ脂質を摂っても食欲がおさまらない人や、脂肪の摂取量を増やすと体調が悪くなったり、手や髪の毛が油っぽくなったりする人は、脂質の代謝が悪い可能性が高いです。
もちろん、脂質の代謝を良くすることが最も重要になります。ただ、脂質の代謝が高まるまでは、糖質をうまく活用してエネルギー不足を防ぐようにしましょう。
そうすることで、黄体期の過度な食欲を抑えることができるようになるはずです。
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今回述べたように、自律神経が整っていれば、基本的に生理周期に合わせて食事や運動を変える必要はありません。そのときの食欲や体の調子に合わせて生活していれば、自然と体重はコントロールされます。
そして、生理前に過剰な食欲が起こっている場合には、栄養不足やエネルギー不足などが起こっている可能性が高いと考えるようにしましょう。
こうした思考をもった上でダイエットを実施すれば、生理周期に惑わされずに、体の本質に基づいたダイエットをできるようになります。