ダイエット 基本

オートファジーのダイエット効果について徹底解説

オートファジーとは、細胞に備わっている「細胞内に存在するタンパク質を分解する仕組み」です。1963年に「自分自身を食べる」という意味でクリスチャン・ド・デューブによって定義されました。
こうしたオートファジーは、体内におけるタンパク質量や代謝の維持などに関わっており、体の健康にとって欠かせない働きだといえます。
またオートファジーは、食欲にも関係します。オートファジーが適切に働くことで食欲が抑えられるのです。
このようにオートファジーは、ダイエットを含めた健康維持に深く関わっています。そのため、オートファジーについて学ぶことは、健康的なダイエットをするために大切です。
そこで今回は、「オートファジーのダイエット効果」について解説します。

オートファジーとは

オートファジーは、体にとって必要不可欠である「タンパク質」のリサイクルに関わっています。
タンパク質は体内でリサイクルされることで、食事からタンパク質を摂らなくても体で必要な量を下回らないように調整されています。こうしたタンパク質のリサイクルにおいて、中心的な役割を担っているのがオートファジーです。
そのため、オートファジーについて理解するためには、まずはタンパク質について学ぶ必要があります。

タンパク質不足が起こす問題

体の健康を保つためにタンパク質が大事であることは、一般的に認識されている通りです。
例えば、肌を構成しているコラーゲンはタンパク質です。その他にも、髪の毛や爪、筋肉、内臓、ホルモン、酵素など、生きるために欠かせない構造や機能にタンパク質は深く関わっています
そのため、タンパク質不足が起こると、以下のようにさまざまな不調が出現します。
・肌荒れ
・ハゲ、薄毛
・代謝の低下
・冷え症
・倦怠感(体のダルさ)
・免疫低下
・生理不順
・月経前症候群(PMS)
タンパク質不足によって生じる問題は、挙げるとキリがありません。
10代や20代といった若い女性が間違った方法でダイエットを行って、タンパク質不足になる人は多いです。そうなると、肌荒れなどの美容的な問題だけでなく、「不妊」といったような生殖機能にも悪影響が及びます
若い女性に限ったことではありませんが、「タンパク質不足は体に問題を引き起こす大きな原因となる」ということを知っておいてください。

体に必要なタンパク質量

それでは、こうしたタンパク質は1日にどれくらいの量が体内で作られているのでしょうか。
答えは「1日に約200グラム」のタンパク質が体内で合成されています。そして、この200グラムのタンパク質は、全てが食事から補われているのではありません。
一般的に、食事から摂取するタンパク質の量は1日で「体重1キロ当たり1.1グラム」といわれています。つまり、体重が60キロの人であれば、1日に約66グラムのタンパク質を摂っているということです。これは、厚生労働省などが推奨しているタンパク質の摂取量とほぼ一致しています。
ただ既に述べたように、1日に体内で作られるタンパク質量は約200グラムです。食事から摂取するタンパク質が体重1キロ当たり1.1グラムだと、食事だけでは体内に必要なタンパク質量を満たされないということになります。
しかし、食事から毎日200グラムのタンパク質を摂らなくても、体がタンパク質不足になることはないのです。

体内のタンパク質量を維持するメカニズム

体内のタンパク質量は、食事から摂ったタンパク質に依存しているのではなく、既に体内に存在しているタンパク質をリサイクルすることで必要量を維持しています。
そのため、食事から毎日200グラムのタンパク質を摂らなくても、タンパク質不足にならないのです。
タンパク質は、「アミノ酸」と呼ばれる小さな分子が何個もつながってできています。つまり、タンパク質を作るためにはアミノ酸が必要不可欠です。
体内には。タンパク質不足にならないように、タンパク質の原料であるアミノ酸が常に用意されています。こうした体内でタンパク質を作るためにアミノ酸が準備されている状態を「アミノ酸プール」といいます。
体内には、プールに水が貯まっているように、いつでもタンパク質を作り出すためのアミノ酸が準備されているのです。
そしてこうした予備のアミノ酸は、食事から摂取したタンパク質だけでなく、体のタンパク質を分解することで用意されています。
つまり、体内では常にタンパク質が「分解 → 合成 → 分解 → 合成……」というようにリサイクルされているのです。

autophagy diet

このように、基本的に体内におけるタンパク質量は、既に存在しているタンパク質をリサイクルすることで維持されています。
こうしたメカニズムが備わっているため、食事から摂取するタンパク質が体重1キロ当たり1.1グラムという量であっても、体内ではタンパク質が不足しないようになっているのです。

タンパク質がリサイクルされている2つの理由

それでは、こうしたタンパク質のリサイクルはどこで行われているのでしょうか。それは、筋肉や内臓、皮膚といった一つ一つの細胞内です。
細胞内には、タンパク質などの栄養素が豊富に存在しています。そして細胞内におけるタンパク質は、その場(細胞内)で常に分解と合成を繰り返しているのです。つまり、細胞は細胞内に存在しているタンパク質をリサイクルして活用しているのです。
このように、タンパク質のリサイクルが行われているのは、主に「新鮮さの維持」「栄養の獲得」という2つの目的があります。
 ・新鮮さの維持
既に述べたように、細胞内にはタンパク質などの栄養素が豊富に存在しています。ただ当然ながら、細胞内にあるタンパク質は時間が経過するごとに古くなります。
そして、劣化したタンパク質は本来の役割を果たさなくなるだけではなく、細胞の正常な働きを妨げるのです。いってしまえば、古くなったタンパク質はゴミになります。
つまり、細胞内に劣化したタンパク質が溜まっている状態は「家(細胞)の中がゴミ(劣化したタンパク質)であふれているのと同じ」だといえます。
当然、ゴミが溜まった細胞は元気がなくなって正常に働かなくなります。
そうした事態を防ぐためにも、細胞内では「古くなったタンパク質が分解されて、新たなタンパク質が合成される」というリサイクルが繰り返し行われているのです。
 ・栄養の獲得
先にも述べたように、体内でタンパク質が不足すると、さまざまな不調が出現します。ただ、体内に必要なタンパク質量の多くは、食事から摂取した栄養(タンパク質)でまかなわれているわけではありません。体のタンパク質をリサイクルすることで、必要なタンパク質量を維持しています。
つまり、体にとって必要な栄養(タンパク質)を獲得するために、細胞内でタンパク質がリサイクルされているのです。
このときに注意しなければいけないことは、いくらタンパク質をリサイクルしているからといって「食事からタンパク質を摂らなくても大丈夫」というわけではありません。当然ながら、食事から摂取するタンパク質量が少なくなると、その分だけ体のタンパク質を多く分解しなければいけなくなります。
こうした状態は、24時間以内など短期的であれば、不調が現れるほどの問題とはなりません。ただ、長期的に食事からのタンパク質摂取が不足すると、体のタンパク質が過剰に分解されてしまい、タンパク質不足となってしまうのです。

autophagy diet

体内におけるタンパク質のリサイクルは、食事から十分量のタンパク質が摂取されることで維持されています。
食事から摂るタンパク質の不足が一時的であれば、体内で古くなったタンパク質がリサイクルされることで必要なタンパク質は用意されます。しかし、食事からのタンパク質摂取不足が長期的になると「体内でタンパク質が不足する」という危険な状態になってしまうのです。
このように、細胞はタンパク質をリサイクルすることで栄養を確保しています。
ただ、こうしたリサイクルは「食事から十分なタンパク質を摂って、はじめて長期的に維持される」ということを理解しておいてください。

タンパク質の分解をオートファジーが行っている

ここまで述べたように、タンパク質は体内でリサイクルされています。リサイクルすることによって、細胞内の新鮮さを保ったり、体に必要なタンパク質を作りだしたりしているのです。
そして、こうしたタンパク質のリサイクルにおける中心的な役割を担っているのが「オートファジー」になります。
オートファジーとは、簡単にいってしまうと「古いタンパク質を食べて分解する」という働きです。具体的には、細胞内にある「リソソーム」と呼ばれる器官がオートファジーの役割を担っています。
既に述べたように、人間の体内では、タンパク質がリサイクルされることで細胞が正常に働いたり、体に必要なタンパク質が作り出されたりしています。当然ですが、細胞の活動が悪くなったり、タンパク質が不足したりすると、体には必ず変調が起こります。
つまり、タンパク質のリサイクル機能の中心的な役割を担っているオートファジーは、体の健康を維持するために欠かせない機能だといえます。

autophagy diet

このように、オートファジーとは体内にある古いタンパク質を分解する働きであり、健康を維持するために欠かせないものになります。

オートファジーとダイエットの関係性

オートファジーは、細胞内でタンパク質を分解してリサイクルする役割を担っています。ただ、脂肪や糖などは分解することはできません。脂肪は大きすぎてオートファジーで分解できませんし、糖の分解は主要なメカニズムがオートファジーではありません。
そのため、いくらオートファジーを活性化させても、オートファジーによって脂肪や糖などが分解されて痩せることはないのです。
ただ、オートファジーは「食欲」や「代謝」に影響することで、ダイエットをサポートします。

オートファジーは食欲を抑制する

食欲を作り出しているのは、主にホルモンです。具体的には、「レプチン」と「グレリン」という2つのホルモンのバランスによって食欲はコントロールされています。
レプチンは、脂肪細胞で作られるホルモンであり、食欲を抑える働きをもっています。その一方でグレリンは、胃で合成されて食欲を促す作用があります。つまり、レプチンの量が少なくなるか、もしくはグレリンの量が多くなると食欲が強くなるのです。
そして、実際に食欲増加を引き起こす原因となるのは、グレリンではなくレプチンです。レプチンが適切に作られなかったり(レプチンの量が少なくなる)、働かなくなったりすることで異常な食欲が作られてしまいます。
レプチンが十分に作られているにも関わらず、適切に働かない状態を「レプチン抵抗性」といいます。
体内でレプチン抵抗性ができると、どれだけ食べても食欲が収まらず食べ過ぎてしまいます。その結果、どんどん太ってしまうのです。
そして、こうしたレプチン抵抗性を作り出す要因の一つに「オートファジーの機能低下」が挙げられます。オートファジーが上手く働いていないことで生じる「小胞体ストレス」と呼ばれる問題が、レプチン抵抗性の原因となっていることが明らかになっているのです。
こうしたことから、オートファジーが適切に働いていることは、食欲を抑える(正常にする)ために欠かせないといえます。
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オートファジーはミトコンドリアを活性化して代謝を高める

またオートファジーは、脂肪燃焼を促す「新陳代謝」にも深く関わっています。代謝とは、糖質やタンパク質、脂質からエネルギーを生み出す過程のことをいいます。つまり、代謝が悪くなると、脂肪が分解されにくくなるため太りやすくなるのです。
脂肪の代謝は、細胞内に存在する「ミトコンドリア」と呼ばれる器官で主に行われます。オートファジーは、代謝の中心的な役割を担っているミトコンドリアが正常に働くために欠かせないのです。
細胞の中には、適切に働いていないミトコンドリア(不良ミトコンドリア)が存在しています。こうした不良ミトコンドリアが増えてしまうと、ミトコンドリアで代謝が適切に行われなくなります。
ただ、そうしたことを避けるために、オートファジーが不良ミトコンドリアを分解していることが明らかになっています。つまり、細胞内で古くなったタンパク質がリサイクルされているのと同じように、不良のミトコンドリアを排除してくれているのです。
こうしたことから、オートファジーが適切に働いていることは、代謝を高く保つために欠かせないといえます。

オートファジーを活性化する方法

オートファジーは、健康の維持やダイエットのために必要不可欠な働きになります。それでは、このようなオートファジーを活性化する方法はあるのでしょうか。
既に述べたように、オートファジーはタンパク質という栄養を獲得する役割を担っています。そのため、食事から摂取する栄養を少なくすると、オートファジーが活性化されるのです。
食事から摂取する栄養が少なくなると、体はオートファジーを活性化させて、体内で栄養を作り出します。人間は、こうしたオートファジーの働きによって、十分な食事が摂れないようなときでも生命を維持してきたのです。
つまり、ファスティング(断食)をすることが、オートファジーを活性化することになります。
そして、オートファジーの活性化には特にタンパク質と糖質の制限が必要不可欠になります。タンパク質を構成しているアミノ酸と、糖分を摂取することで作られる「インスリン」と呼ばれるホルモンが、オートファジーの働きを抑えることが明らかになっているためです。
そのため、「食事から摂取するタンパク質と糖質を制限することがオートファジーを活性化するためには欠かせない」といえます。
ただ既に述べたように、長期的なファスティングは、タンパク質不足という重大な問題を引き起こす可能性が高いです。
こうしたタンパク質不足を防ぎながらオートファジーを活性化するためには、週に1日や2日のファスティング日を設けるような「間欠的ファスティング」が有効になります。
数日間おきに何も食べない日(ファスティング日)を作ることで、タンパク質不足を起こさずにオートファジーを活性化することができるのです。
ちなみに、無駄な間食を避けるようにするだけでも、オートファジーが活性化される可能性は高いです。そのため、まずは間食を減らすようにすることがオートファジーを活性化するための第一歩だといえます。
今回述べたように、オートファジーを活性化させることは、食欲を抑えたり、代謝を高めたりすることにつながります。そして、オートファジーの働きを活発にするためには、ファスティング(断食)が有効です。
ただ、長期的なファスティングではタンパク質不足という問題を引き起こす可能性があります。
そうしたことを避けるためにも、オートファジーを活性化させるためには間食を止めることからはじめるようにしましょう。また、ファスティングを行うのであれば、間欠的なファスティングを実施することが大切です。