ダイエット 基本

カロリー制限によるダイエットを避けるべき理由

世の中にはさまざまなダイエット方法があります。その中でも「カロリー制限」は有名です。カロリー制限とは、簡単にいうと「食事から摂取するカロリー量を制限することで痩せる」というダイエット方法になります。
カロリー制限は「体重増減は摂取カロリーと消費カロリーの収支によって決まる」という理論から成り立っています。しかし、この理論は間違っているのです。
確かに、摂取カロリーと消費カロリーの収支が体重の増減に影響します。ただ、体重を主にコントロールしているのは、カロリーではなくホルモンです。具体的には、ホルモンによって脂肪蓄積や食欲などが調整されることで体重がコントロールされています。
そしてカロリー制限を行うことは、体重を大きく減らさないだけでなく、体を動かすために欠かせないエネルギーの不足を招くのです。つまり、カロリー制限は痩せないだけでなく、さまざまな不調を引き起こす可能性があります。
こうしたことからも、ダイエットを目的としたカロリー制限は避けるべきです。
そこで今回は「カロリー制限によるダイエットを避けるべき理由」について解説します。

カロリーとは

カロリー制限について考えるためには、まずは「カロリーとは何か?」ということについて理解しておく必要があります。カロリーとは、簡単にいうと「エネルギーの単位」です。
人が生命を維持するためには、エネルギーが必要になります。例えば、筋肉や心臓、内臓を動かすためには、エネルギーの存在が欠かせません。つまり、エネルギーがないと人は死んでしまいます。
こうした生命を保つために欠かせないエネルギーの単位がカロリーです。
そして、エネルギーを作り出すエネルギー源は主に食事から摂取します。食品から生み出すことができるエネルギー量が、カロリーという単位によって表されているのです。ただ、世界的にはカロリーよりも「ジュール」や「ワット」の方が一般的に使われています。

食物のカロリーは全てエネルギー源になるわけではない

食物がもつエネルギー(カロリー)量は、その食品が燃やされたときに発せられる熱量で決められます。ただ、食物に含まれているカロリー量は、全て体内のエネルギー源として利用できるわけではないのです。
それは、主に「食べた物全てが内臓から体内へ吸収されるわけではない」「食べ物のカロリーが全て体のエネルギーとして利用されるわけではない」という2つの理由から説明されます。
例えば、炭水化物は99パーセントが体内に吸収されますが、脂肪は95パーセント、タンパク質は92パーセントしか取り込まれないのです。また、便や尿中に排泄されるエネルギー源も存在するため、食物の全てが体のエネルギーとして利用されることはありません。
このように、食べ物がもつカロリーは全てが体のエネルギー源に変換されるわけではないのです。

カロリーに関する間違い

カロリーに関しては、多くの誤った認識がなされています。そしてそれが、ダイエットを妨げる要因となっているのです。

カロリー摂取とカロリー消費は関連していない

カロリー制限によるダイエットは「摂取カロリーを減らすことでカロリーの収支を少なくする」という方法です。つまり「摂取カロリーだけ減らして消費カロリーはそのまま、もしくは運動によって増やす」ということになります。
ただ、この理論は「カロリーの摂取とカロリーの消費に全く関連がない」ということが前提で成り立っています。しかし実際には、カロリーの摂取量と消費量はお互いに関係しているのです。
カロリー制限の理論によると、活動量を変えずに食事による摂取カロリーを減らせば、その分だけ痩せるということになります。しかし、体には食事による摂取カロリーが減った場合には、その分だけ消費するカロリー量を減らすような仕組みが備わっているのです。
例えば、食事によるカロリー摂取量を200キロカロリー減らしたとします。そうすると、体は代謝を低下させることで、1日に消費するカロリー量も200キロカロリー少なくするのです。
既に述べたように、エネルギーは生命を維持するために欠かせません。そのため、摂取カロリー以上にカロリーを消費するということは、エネルギー不足という危機的な状況になってしまうのです。
そうしたことを避けるために、摂取カロリーを減らすと「その分だけ代謝を下げて消費カロリーも減らす」という反応が起こります。
このように、カロリー摂取とカロリー消費はお互いに関連し変化しているのです。

消費カロリー量は容易に算出できる

人間には「基礎代謝量」と呼ばれる、体を動かさなくても消費されるエネルギー量があります。つまり、基礎代謝量とは、生きていくために最低限必要になるエネルギー量です。
ほとんどの人は、基礎代謝量と運動で消費したカロリー量によって、1日の消費カロリーを算出します。そして、その合計した値と摂取カロリーとの収支によって体重の増減を計算するのです。
しかし実際には、体が消費するカロリー量は非常に複雑であり、基礎代謝や運動による消費カロリーだけで正確な数値を算出することは不可能です。例えば、消費カロリーは、基礎代謝量と運動以外にも以下の要因によって影響を受けます。
・食事誘発性熱産生(DIT)
・運動以外の熱産生
・運動後過剰酸素消費量(EPOC)
・便、肝臓のエネルギー消費
摂取カロリー量は、食事に含まれているカロリー量からおおよそ把握できます。ただ、消費カロリーに関しては、さまざまな要因が入り混じっているため、正確に算出できないのが現状です。
このように、カロリー摂取に関してはある程度理解されていますが、カロリーの消費量については正しく把握されていないのです。
以下に、カロリー消費が起こる具体的な体の反応についてまとめます。
・熱産生
・タンパク質合成
・脂肪合成
・骨産生
・筋肉産生
・脳の活動
・心拍数の増大
・一回拍出量の増大
・呼吸数の増大
・運動
・肝臓での解毒
・腎臓での解毒
・膵臓や腸における消化活動
・排泄活動
こうしたことからも、カロリーの消費量は容易に算出できないのが現状です。

過剰なカロリー摂取は意識の問題

カロリー制限を推奨している人は、痩せられない人に対して「(食欲を我慢する)意識が弱いことが肥満の原因である」といいます。つまり、本人の意識次第で食欲は抑えられるということです。
確かに、食べ過ぎてしまうことは、本人の気持ちが大きく影響しているような感じがします。しかし実際には、食欲をコントロールしているのは意識ではなくホルモンです。そして、ホルモンの分泌は無意識下で行われているのです。
例えば、空腹時に食べ物の匂いを嗅ぐと誰でもお腹が空きます。その一方で、満腹時に美味しそうな匂いがしても、食欲は沸かないはずです。これも食欲が意識の問題ではなく、ホルモンによってコントロールされていることを示す現象になります。
このように「食べ過ぎは本人の意識の問題」ということは誤った認識だといえます。

脂肪蓄積は食べた量によって変化する

カロリー制限を推奨している人たちは、脂肪が蓄積するかは「食べるか食べないか?」によって決まると考えています。具体的には、食べる量(摂取カロリー)を減らせば痩せて、食べる量を増やせば太るということです。
つまり、脂肪の蓄積はカロリーの摂取量によって変動するため「体重の増減は不規則的に変化する」ということになります。
しかし、体には「ホメオスタシス(生体恒常性)」と呼ばれる機能が備わっています。生体恒常性とは、体の機能を一定に保つ仕組みです。
例えば、夏の暑いときであっても、冬の寒いときでも体温は一定です。また血糖値も、食後は一時的に上がるものの、すぐに一定の値に戻ります。これは、ホメオスタシスの働きによるものであり、体の状態を維持するために欠かせない機能です。
既に述べたように、カロリーの摂取量が減るとそれに合わせてカロリーの消費量も減ります。これも、生体恒常性の働きによるものです。
また、こうした生体恒常性はホルモンの分泌にも大きく影響しています。そして、脂肪の蓄積はホルモンによって調整されているため、脂肪蓄積にもホメオスタシスは作用しており、一定の状態に保つようになっているのです。
例えば、食べ過ぎると生体恒常性の働きによって「レプチン」と呼ばれる食欲を抑えるだけでなく、脂肪の分解を促す作用を持つホルモンが分泌されます。その結果、食事量が減り体の脂肪は分解されるため、体重が増えないようにコントロールされるのです。
その他にも、食欲や脂肪の合成・分解には以下に記す物質が関係しています。
・アディポネプクチン:状況によって食欲をコントールする
・ホルモン感受性リパーゼ(HSL):脂肪の合成を促進する
・リポタンパクリパーゼ(LPL):脂肪の分解を促進する
・アディポーズトリグリセリドリパーゼ(ATGL):脂肪の分解を促進する
このように、基本的に脂肪の蓄積はホルモンによってコントロールされているのです。そして、健康体であれば生体恒常性によってホルモン分泌が自然と調整されるため、脂肪の蓄積は摂取カロリーに関わらず一定に保たれるようになります。
こうしたことから「脂肪の蓄積は食べた量によって変動する」という考えは誤りだといえます。実際には、体重の増減常にホルモンによって規則的にコントロールされているのです。

食べ物のカロリー量のみが体重増減に影響する

カロリー制限を推奨している人は「カロリー量が同じであれば、炭水化物であってもタンパク質、脂質でも体重の増減に与える影響は同じである」と考えます。
例えば、糖質(炭水化物)は1グラム当たり4キロカロリーであり、タンパク質も同じように1グラム当たり4キロカロリーです。そのため、純粋に糖質量50グラムとタンパク質量50グラムの食物では「体の脂肪蓄積に与える影響はどちらも変わらない」ということになります。
しかし実際には、糖質とタンパク質では、代謝(消化・吸収・エネルギー合成など)過程とホルモンの反応が全く違うのです
具体的には、糖質を摂取すると脂肪合成を促す「インスリン」の分泌が引き起こされます。その一方で、タンパク質を摂取すると、脂肪分解を促進する「グルカゴン」の分泌が誘発されるのです。つまり、同じカロリー量であっても、糖質とタンパク質では体重の増減に与える影響が全く違います
当然ながら、脂肪も同様に糖質やタンパク質とは異なった反応を引き起こすのです。
このように、同じカロリー量であっても体に与える影響は栄養素によって異なります。そのため、食べ物をカロリー量だけで考えるのは間違っているといえます。

カロリー制限によって起こる問題

ここまで述べたように、カロリーに関しては多くの誤った認識がもたれています。これは、医師や栄養士といった専門家にも起こっている問題です。そして、こうした間違った認識を元にカロリー制限を実施すると、さまざまな弊害が出るようになります。
そこで以下に、カロリー制限によって起こる問題について記します。

強い空腹感

カロリー制限を行うと、体重が減少することは確かです。カロリー制限によってエネルギー不足が生じると、脂肪の合成が抑えられたり、逆に分解が促進したりするためです。ただ、一般的にいわれているように、カロリーの摂取量と消費量の収支によって算出されるような体重減少は起こりません。
例えば、1日の中で、カロリー摂取量よりカロリー消費が500キロカロリー多かったとします。
そうなると、1ヶ月で15,000キロカロリー分のカロリーが消費されます。脂肪1キロ当たりが、だいたい9000キロカロリーとされているため、カロリーによって体重の増減が決まるのであれば、1ヶ月で15,000キロカロリー消費されると約1.5キロ痩せることになるのです。
想像してみるとわかると思いますが、このようにカロリー計算に沿った体重の増減は起こりません。もしカロリー量だけで体重が変動するのであれば、毎日500キロカロリーを制限すると、1年後には約18キロ、2年後には約36キロも痩せることになるのです。
つまり、もともと体重が50キロしかない人が毎日500キロカロリーの食事制限を行うと、3年で体重はゼロを下回ってしまうことになります。
そんなことが起こらないのは容易に想像できるはずです。
そして、カロリー制限は期待しているほど体重が落ちないだけでなく、強い空腹感を作り出すのです。
具体的には、カロリー制限による体重減少は「グレリン」と呼ばれる、食欲を増進させる作用をもつホルモンの分泌を促します。さらに、「ペプチドYY」や「アミリン」「コレシストキニン」といった満腹感を作り出して食欲を抑える働きがあるホルモンの分泌は抑制されるのです。
こうしたことから、カロリー制限によって少しでも体重が減少すると、強い空腹感が作り出されます。
そして、このようなホルモン分泌の変化は、急激かつ永続的に起こることが明らかになっています。つまり、カロリー制限によって一時的に体重が落ちると、食欲が増進してリバウンドする可能性が高いだけでなく、体重が戻った後も食欲増進の状態が継続するのです
その結果、体重が減らないだけでなく、カロリー制限をする前よりも太りやすい体質となってしまうのです。
このように、カロリー制限には強い空腹感を作り出すという問題があります。

代謝が低下して戻らない

既に述べたように、カロリー制限を行うと生体恒常性によってカロリーの消費量が減ります。つまり、摂取カロリーを制限すると代謝が悪くなるのです。代謝が悪くなると、痩せにくくなるだけでなく、冷えや倦怠感、血圧の低下など、さまざまな不調が出現することになります。
そしてこうした代謝の変化は、カロリーを制限するとすぐに起こります。その一方で、一度起こった代謝の低下は、食欲ホルモンと同じようにカロリー制限を止めてもなかなか元に戻らないのです。
そのため、カロリー制限をすると、食欲が増進されることに加えて代謝が低下することで痩せにくくなります。
このように、代謝が悪くなることも、カロリー制限によって起こる問題の一つです。

エネルギー不足による不調

カロリー制限を行うと、体に必要なエネルギー量が不足することになります。つまり、体内でエネルギー不足が生じるということです。
既に述べたように、体を活動させるためにはエネルギーが欠かせません。例えば、心臓を活動させたり、内臓で食べ物を消化・吸収したりすることにも、エネルギーは必要不可欠です。そのため、エネルギーが不足すると、心臓の働きが弱くなったり、消化不良を引き起こしたりすることになります。
このように、カロリー制限によってエネルギー不足が生じると、さまざまな不調を招くのです。以下に、カロリー制限によるエネルギー不足よって起こりやすい不調の例を記します。
・心拍数減少
・心拍出量低下
・体温低下
・活動性低下
・血圧低下
・倦怠感
・めまい
・脱毛
・興味の喪失
・集中力の低下
・食に対する強い欲望
今回述べたように、カロリーに関しては、医師や栄養士などにも誤った認識がもたれています。その結果、カロリー制限という誤ったダイエット方法が指導されているのです。そして、カロリー制限は思ったように痩せないだけでなく、体にとってさまざまな不調を招くことになります。
こうしたことからも、ダイエットを目的としたカロリー制限による食事法は避けるべきだといえます。